1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 21:32:50.48 :0JHRS/hl0

 アイドルマスターモバイル シンデレラガールズのSSです。
 その手の話が苦手な方は間違ってご覧にならないようお願いします。
 なお地の文が本文には含まれます。こちらもまた苦手な方はご覧にならないようお願いします。


3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 21:35:17.22 :0JHRS/hl0

 プロデューサーの朝は早い。
 まだ静かな街から抜け出すように、布団から這い出てTVをつける。
 冷たい朝の空気は針のように体を突いて眠気を飛ばしてくれた。
 少しのタイムラグの後に映った天気予報は降水確率40%を示していた。

「こりゃ悩みもんだな、5割超すとなりゃ持ってくんだが……」

 とひとりごと。
 ヒゲをそったり、簡単に朝を済ませたりその他諸々の朝支度も、もう無意識にだってこなせる。

 結局傘を持たずに家を出た。小さい頃からなんか傘は苦手だった。


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 21:37:22.61 :0JHRS/hl0

 車で40分ちょい。事務所に着くまでには、短めのアルバムCDなら聞き終えれる。
 早朝の曇り空の下、途中のコンビニで昼食と一緒に買った缶コーヒーを赤信号の度に口にしてたら、
 あっという間に事務所だ。
 車のドアを開け、外に出ると温度はすっかり秋のそれだった。
 ちょっと暖かめの格好を選んでおいて良かったと、満足しながら事務所の中へと入っていく。 


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 21:40:55.25 :0JHRS/hl0

「助っ人外国人フィギュアって……」

 コーヒーのオマケのニッチさに驚きながら事務所のドアを開ける。

「ん? P(※)さん おはよう。Pさんも、フィギュアとか興味あったのか?」

 神谷奈緒、俺の担当アイドル。
 休日の今日は朝早くから事務所に出てきてもらって、俺といっしょに今度のライブのハコの下見に行く話になっている。
 すこし強気な喋り方の中に、とっても優しい心を持つ、恥ずかしがり屋の可愛い子だ。

(※ Pはプロデューサーの名前ということでよろしくお願いします)


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 21:45:11.89 :0JHRS/hl0

「おはよう、奈緒。いやなに、コーヒーのオマケでさ」

 そう言ってフィギュアが入ったコンビニ袋ごと奈緒に渡す。

「あぁ、オマケのフィギュアか。それにしても野球選手のフィギュアって……」

 ----需要あんの? あ、でもサッカー選手はアツ×マヤが来てるって比奈も言ってたし
 野球選手も……ぶつぶつぶつぶつ。
 ……オタク趣味を俺に隠さなくなったのはいつからだったけかな。まだ隠していた頃は、
 やけに夕方のTVを気にしているな、という具合にしか思わなかったんだが。
 今では俺も奈緒や比奈からオススメのアニメを何個か借りて見たりするようになった。
 加蓮もベッドの上に居たまま楽しめるからという理由で、アニメを気に入ったらしく、
 俺と二人で深夜アニメの手ほどきを奈緒や比奈から受けることもある。
 まぁなんにせよ、奈緒が隠していた趣味の話を俺にしてくれるようになったのは嬉しい話だ。


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 21:51:33.73 :0JHRS/hl0

「これでよしっと。奈緒! 準備できたか?」

 しげしげとロバート・ローズを眺めていた奈緒も俺の声に応え、
 フィギュアを置いてこっちを向いた。

「お、おう! もうPが来る前から準備は出来てたんだ」

 奈緒は自らのカバンを持ちあげ、先にドアへと向かう。
 書類の最終確認を終えて、遅れて俺もドアに向かう。
 戸締りも忘れないように、と。
 ローズのフィギュアは俺の机の上に飾っておいた。
 

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 21:58:19.91 :0JHRS/hl0

 二人で仲良く階段を降りて、事務所の外へ出る。

「うお、やっぱり事務所の中と違って、寒いな。P、ちょっと早く車に乗せてよ」

 奈緒の服装はパーカーの下にTシャツ、それにジーパンを合わせたというものだ。
 季節の変わり目に合わせて、脱ぎ着で調節出来る組み合わせなのだろうが、
 朝の気温は予想以上に寒かったのだろう。

「ほら、車もすぐには暖まらないし、これ着といたらどうだ」

「お、おう……」

 脱いだジャケットを渡すと、奈緒は少しのためらいを見せながらも受け取り、肩に掛ける形でそれを着た。
 ……少し寒いかもしれない。
 かわいいアイドルの手前、カッコつけては見たが、
 襯衣を除くとワイシャツ一枚である。車へと向かう足が少し速くなるのも仕方がないもんだ。


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 22:04:11.57 :0JHRS/hl0

 キーを回してエンジンが温まるのを待たずしてエアコンのスイッチをONにする。
 後部座席へ風を送るのはエアコンが効いて温風が出始めてから。
 そうしないと、ただの冷風が奈緒を襲うことになってしまう。
 駐車場を出て、何個目かの赤信号。
 そろそろ温風も出始めたことを確認して、後部座席への送風をオンにする。
 そのついでにミラー越しに後部座席を覗きみる……と。

 俺のスーツに頬擦りする奈緒が目に写った。

 
(確かに肌触りの良い素材だったな、毛が立ってて空気を含むから暖かいんだ。ちょっと高かったけどな)
 
 -----プロデューサーは鈍すぎるよ-----
 何故かいつの日か凛に事務所で言われた台詞が思い出された。
 プロデューサーとしては勘の鈍りはマズイ話なんだが……なぁ。いったいどこが鈍いと言われているのだろうか。
 さっぱりわからん。
 そうこう考えている間に信号が青に変わり、注意をフロントガラスの向こうへと戻す。


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 22:09:42.34 :0JHRS/hl0

「なぁPさん。今度のステージって何人くらい人入るんだっけ?」

 目的地まで半分も過ぎた頃、後部座席から奈緒の声がする。

「確か…2000人ちょいだったかな」 

-----詳しい数字はカバンの書類に書いてあるぞ。見るか?
 -----ううん、いいや。ありがと……

「緊張しているのかもな」

 小さな俺のつぶやきは後部座席の奈緒には届かなかったみたいだった。

 ポツリと雨粒が一つ、フロントガラスに落ちて弾けた。
 40%が選ばれて、雨が降ってくるようだった。


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 22:16:41.49 :0JHRS/hl0

「着いたぞ」

 運転席のドアを開け、外に出る。
 車での移動の間に、陽は十分に照っていてくれたみたいでもう肌寒くもない。
 後ろに回ってドアを開け、奈緒を降ろしてやる。
 どっかの紳士や執事の振る舞いみたいでこっ恥ずかしいけれど、
 乙女なアイドル達は皆多少の差はあってもこの扱いを喜ぶ。
 -----皆にやってあげてる、しかもちひろさんの入れ知恵って知ったら、
  -----誰も喜ばないどころか怒るんだろうな。
 ニコニコ笑顔の奈緒の顔を見ながらそんなことを思った。
 
 もういらないだろうに、俺のスーツは手放したくないみたいだった。


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 22:27:44.13 :0JHRS/hl0

「スーツ、まだ居るか? いらないなら車においとくけど」

 一応聞いておく。

「Pさんが着ないのならまだ借りておいてもいいか……? 着るんなら返すけどよ」

「いや、いいよ。そのまま来ておいてくれて構わん」

 そう言いつつも、最初から奈緒の顔からはスーツを俺に返す気なんて伝わって来なかったが。
 
「そっか女の子は筋肉量の関係で寒さを感じやすいんだっけか?」

 奈緒に言う訳じゃなかった、なんとなく思考が口から漏れた。

「……あんたバカァ?」

 あ、それ知ってる。っと答える訳にはいかなかった。スーツに包まる奈緒の顔はそれを許さぬほどに怒っているようだった。
 ほんっと若い女の子ってのは、ころころ顔が変わる。

「女心と秋の空」

 奈緒の目がさらにつり上がったように感じた。 今度は聞こえてしまったみたいだ。
 
 こりゃちとまずい。


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 22:32:42.78 :0JHRS/hl0

 奈緒の怒りをなだめつつ、受付を済まして中に入る。
 人気のハコだから今日も他のミュージシャンのライブがある筈だ。
 一、ニ時間の内にスタッフさんたちも現地入りするだろう。
 だからこそ邪魔にならない朝の時間を選んで下見に来たわけだ。

「こ、ここで歌うのかァ」

 ステージに立って観客席を眺める奈緒。やっぱり緊張しているみたいだな。

「おいおい大丈夫か奈緒? 当日はきっとここがファンで一杯に埋まるぞ?」

「そ、そうだよなァ……人居なくてこれだもんなァ……」

 俺のからかいにも珍しく素直に答えている。
 こりゃ……相当だな、プロデューサーの腕の見せ所だ。


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 22:39:30.61 :0JHRS/hl0

「なぁ奈緒」

「あ、あァ? どうした、Pさん」

 奈緒の肩に手を置き、視線を合わせる。

「奈緒は一人で歌うつもりか?」

「ど、どういう意味?」

 奈緒がステージに立つのは一人のソロではない。
 渋谷凛、神谷奈緒、北条加蓮のトリオユニットだ。
 三人で歌って、三人で踊る。三人でアイドルなんだ。
 
「凛、加蓮が本番では一緒にいるんだ。それでも緊張するか?」

「あ!そっか、でも……Pさん! やっぱり、緊張しないってのは無理かも……しんないよ」
 
 奈緒の肩が震えている。  

 そしてなにより奈緒に思い出して欲しいのは、三人で練習してきた日々ともう一つ。


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 22:42:00.95 :0JHRS/hl0

「ファンの皆もついてる。もちろん俺も事務所の皆もだ」

 忘れてほしくない、奈緒を応援する人の存在を。 
 奈緒は俺の言葉にうんうん。と、
 うなづいてるのが見ないでもわかる。

「奈緒はファンや皆が嫌いか? こうやって歌って踊るアイドル活動とか嫌いか?」

「そんなことないっ!!」 

 手元の奈緒が勢い良く振り返る。そして、俺の目を見てよく通る声で叫んだ。


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 22:44:35.96 :0JHRS/hl0


「ファンも、ステージも、ア、ア……あ、アイドルも、全部大好きだ!!!」


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 22:48:17.62 :0JHRS/hl0

 それはよく響く綺麗な声だった。観客がいないのがもったいないくらい。
 明らかだった緊張も、もう見て取れなかった。

「よし、なら大丈夫だ」
 
 ぽんと頭を撫でてやる。

「俺はな、奈緒から教えてもらったアニメも好きだけど-----」


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 22:53:25.21 :0JHRS/hl0

「-----自分の好きなことやってる奈緒を見てるのが何よりも好きなんだよ」
 
 んァ!? っと照れる奈緒が可愛い。

 誰もいない観客席、ステージには俺と奈緒の二人だけ。まるで劇かなにかのクライマックスみたいだ。

「-----だからさ大丈夫だ。奈緒がアイドルやってるのが好きなら大丈夫。きっと輝く」
 
 どうせ芝居がかっているなら、演じきった方がいい。

「心を奪われないファンは居ないよ」
 
 目を見て、奈緒の心に届くように言う。


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 22:58:04.10 :0JHRS/hl0

 ちょっとキザすきたかな……と後悔しかけていると俺の視界から奈緒が消え、真っ暗になった。  

「は、恥ずかしい台詞禁止だ! バカやろー!」
 
 スーツを投げられたようだ。頭に被ったスーツを取って奈緒を見る。

「ほら! もう事務所帰ろう、Pさん! じ、時間だしさ!」
 
 そういって奈緒は舞台の下手へ歩いていった。
 確かに時計はそろそろスタッフさんの入る時間を指している。
 先を歩く奈緒に小走りで追いつき、念の為に聞いてみる。


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 23:01:36.58 :0JHRS/hl0

「もう緊張してないのか?」
 
 満面の笑顔で奈緒は振り返った。

「緊張してるあたしより緊張してた奴が居たからな! もう緊張なんてしねぇよ!」
 
 -----さ、早く車乗ろうぜ。あ、あとスーツ返して。
  -----バレたか。そりゃ俺プロデューサー
 退出の受付を済ませ、車へ向かう途中、奈緒は俺の手から、着ないでいたスーツを奪い取った


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 23:10:15.44 :0JHRS/hl0

 この様子じゃ心配はいらないみたいだ。
 俺は今からもう来月のライブが楽しみで、待ち遠しい気持ちで、
 胸がいっぱいになるのを感じながら、後部座席のドアを開けた。

「ありがとう、Pさん。こんなとこで言うのもなんだけどさ」

 奈緒の顔は見えないままだった。

「アタシがどんなに人気になっても、アタシのプロデューサーは生涯ただ一人だけ」

「Pさんだけだって事、忘れないで…ね!」

 見ないでも分かる。奈緒の顔はあの恥ずかしがり屋の無理した笑顔だって。
 女心と秋の空。空はもう晴れていた。


33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 23:13:41.95 :0JHRS/hl0

以上でおわりです。

この後、劇場やSRの題材となった雨の日のお出迎えになるイメージです。
地の文ありのSSは初めての挑戦。
モバマスSSも初めての挑戦。
とりあえずやり遂げられたことに満足です。
このSSでちょっとでも奈緒の人気が上がって
神谷奈緒の全てのカードがフリトレ相場が1マニーでも上がりますように!

ありがとうございました!





37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 23:31:19.74 :0JHRS/hl0

蛇足みたいな午後の話。
 
 どうも夜分遅くにこんばんは、本当はいつでも「おはようございます」なんですけどね
 DeNAプロダクション事務員のちひろです。
 
 今日はプロデューサーさんと奈緒ちゃんが朝早くからライブステージの下見のお仕事でした。
 その後、奈緒ちゃんと同じユニットの加蓮ちゃんは、
 朝から夕方まで事務所待機の奈緒ちゃんの喋り相手になるために、
 お昼すぎに事務所へ出てきてくれました。
 ですけど凛ちゃんは午後遅くからしか事務所に来れなかったらしいんです。


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 23:33:32.98 :0JHRS/hl0

 プロデューサーさんはお昼から外回りでした。
 傘も持たずに外へ出て、雨に振られて足止めを食らっているというSOSコールが事務所へ届いたんです。
 そんな時だけ病弱キャラに戻る加蓮ちゃんも加蓮ちゃんですが、
 それに騙される奈緒ちゃんも将来が心配です。

「誰が行くか! まったく……」

 と加蓮の茶化しに答えながらも、結局、迎えに行く奈緒ちゃんはとっても可愛かったです。


39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/12(金) 23:35:49.23 :0JHRS/hl0

「なんでまたCGイベント級の出来事が一日に二回も……!」

 とぼやくところを、出社してきた比奈ちゃんに聞かれてしまい、
 それまでに一体どんな『CGイベント級の出来事』があったのか、
 しつこく聞かれるはめにあい、
 誤魔化しに必死になりながら、半ば逃げるように事務所を出た奈緒ちゃんも、
 これまたとても可愛いものでありましたとさ。


 え?なんでそれを私が知っているのか、って……?
 そこに気づいてしまったんですね、
 ほらこの特性スタドリを静脈に注射しましょうか……、
 さぁこっちへ、どうぞ、怖がらないでいいですよ、うふふ。
 すぐにスタミナが減らない体になれますからね~、
 記 憶 は 失 っ て し ま い ま す け ど … … 。

本当におわり。

支援があったのでつい書いてしまいました。これで本当に終わりです。
ありがとうございました。


2ちゃんねるに投稿されたスレッドの紹介です
【2ちゃんねる】モバP「朝早くのお仕事」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1350045170/