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【デレマス】李衣菜「タイムカプセル」


1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/26(月) 04:05:36.58 :q5Fk7A030

*地の文形式です。
*アニデレとよく似た世界ですがアニデレとは違う世界です


2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/26(月) 04:08:14.89 :q5Fk7A030

ポケットってタイムカプセルみたいだ。昔に入れていたものが、突然顔を出してくる。

***

私が初めてみくちゃんとお仕事をした日、それはガムの銀紙だった。
夜更かしをしてしまった次の朝とか、眠気が強い日にはこっそりガムを噛んでいる。
ガムを包む銀紙は吐き出して捨てるのに最適だけど、適当にポケットに入れた結果なくしてしまうことが多い。
銀紙が見つけそこねたときはティッシュにくるんで捨てているけど、そういう時に限って別のポケットから出てくるのだ。
その時も、数日前の銀紙が普段着ているジャケットのポケットから出てきた。

気づいたのはみくちゃんと衣装に着替えているときだった。
直前に口喧嘩をして、雰囲気は良くなかった。
原因はもう覚えていない。


3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/26(月) 04:11:19.60 :q5Fk7A030

「あ、銀紙……」

ボソッと呟いたのにみくちゃんには聞こえていた。
ひょいと顔を出した彼女に「ガムをくちゃくちゃするなんて、李衣菜ちゃんも悪い子にゃあ」と言われる。
まだ虫の居所が良くなかった私はつい言い返してしまった。

「うるさいなぁ。そんな音立ててないし」

「ふーん。じゃあその時どうやって捨てたの? まさかその辺に吐き捨てたり……」

「さすがに心外なんだけど。ちゃんとティッシュにくるんで捨てました」

私はみくちゃんの方を見向きもせずに言った。
彼女はまた「ふーん」と返した。
これ以上会話を続けてもいい方向にならないと思ったから、私はもう何も言わなかった。沈黙が流れた。
気温は高いはずなのに、イヤな寒気がした。衣装の露出が多いからじゃないと思う、たぶん。

空気は最悪のまま、お仕事に向かった。ミントキャンディの宣伝のお仕事だった。
結果として、初めてだということを鑑みても出来はなかなかにひどかった。
そもそも目を留めてくれる人は少ないお仕事って理解していたから、大きな失敗だった印象はないけど。

販売を担当していた方から、仕事の終わりにキャンディをもらった。
その頃には煮えくり返っていたはらわたも十分に冷めて、雰囲気が悪いままお仕事に臨んだことを深く反省していた。
隣のみくちゃんも唇を少し噛んでいるような表情で、きっと私と同じことを感じていたんだと思う。
この気持ちを忘れまいと誓い、私はキャンディを衣装のポケットに突っ込んだ。


4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/26(月) 04:13:40.46 :q5Fk7A030

***

アスタリスクとしての新曲を披露した日、それはコンビニのレシートだった。

その少し前の夜は歌詞作りも佳境に差し掛かり、ピリピリ感も少しあった。
だけど、お互いのことがだんだんわかってきて、口喧嘩しても仲直りするまでが早くなっていた。
そんな中、とある作業を詰める日に、脳の糖分補給のため私はコンビニでプリンを一つ買ってきたのだ。
この、一つ、というところが失敗だった。

みくちゃんがプリンを好きではないかもしれないと思ったから、というのは建前だ。
実はみくちゃんの分を買うのをすっかり忘れていた。
こっそり食べようとしているとみくちゃんに見つかって、またケンカしそうになった。
結局、すぐに私が半分ずつ食べることを提案して、丸く収まった。スプーンは一つだけだったけど、二人で使った。

それが出てきたのは椅子に座ったときだった。
スカートのポケットに何かがある感触がして、取り出すと少し湿気た感光紙があった。なんで今まで気づかなかったのだろう、と思う。


5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/26(月) 04:15:15.77 :q5Fk7A030

「あっ」と呟いた声は十分小さかったはずなのに、またもやみくちゃんには聞こえていた。
「どうしたの?」と彼女が顔を出したから、私は「プリンのレシートが出てきた」と見せた。

「あ、あの時の! 李衣菜チャン、まだちょっとだけ許してないんだからね!」

『ちょっと』を示すため、みくちゃんは親指と人差し指で隙間を作った。
角度の関係で私から見たら閉じているのも同然だった。

「ゴメンって。今日ライブが終わったら何か奢るから」

やった! と喜ぶみくちゃんに、単純だなぁと私は笑った。

ちゃんと覚えていてよね、とみくちゃんが付け加える。
はいはい、と私は応じて、そのレシートの裏に鉛筆でメモし、ポケットに入れた。


6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/26(月) 04:19:03.12 :q5Fk7A030

***

アスタリスクとしては何でもないようなとある日、それは二人で撮ったプリクラだった。

見つけたのは、Rock the Beatのジャケ写のために着替えているときだった。
私はスタジオに時間ギリギリに入ってしまったせいで、大急ぎで着替えていた。
その時にもう着替え終わっていたなつきちが「落ちたぞ、コレ」って苦笑いして差し出してくれていたんだ。
着替えている途中の私はそれを受け取る余裕がなくて、「ちょっと待って!」と言って、しばらく持っててもらった。

「二人とも可愛く写ってるぜ」

なつきちは私に渡すときにそう言った。どうやらじっくり眺めていたみたいだ。
私はすっかり赤面して、抗議の声も上げられないくらいだった。

そのプリクラは、初ライブの打ち上げとして近所のゲームセンターで撮ったものだ。
初ライブに関しては、成功だった。大、とつけてもいいくらいに。
プロデューサーさんこそ「まだ上を目指せるから満足するなよ」と言っていたものの、そのプロデューサーさんもみくちゃんも表情が緩んでいた。
きっと私も同じような表情だったと思う。
直後にみくちゃんとオフに二人で遊ぼうと約束したものの、それから忙しく、ようやくこぎつけた4時間程度の空き時間にたっぷり遊んだ。
その後もお互い忙しくて、顔を合わせることはあっても長く話すことは全然なかった。


7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/26(月) 04:21:20.40 :q5Fk7A030

一張羅のポケットから出てきた小さなプリクラを撮影後自宅で眺めていると、思い出が頭の奥からあぶくのようにぽこぽこと浮かび上がってきた。時系列はごちゃごちゃしているけど。
人の少ないゲームセンターでホッケーをしたこと、みくちゃんの部屋で毎晩のように口論したこと、そしてライブの熱気。
あの時期は全部が目まぐるしく過ぎていって、今では夢だったんじゃないかと思えるような時間だった。
それなのに、思い出は胸いっぱいに詰まっている。
どんどんと思い出されて、胸だけでは足りなくなって、入りきらなかった思い出が目からあふれ出しそうになった。
私は零れ落ちないように、必死に留めようとした。

改めてプリクラそのものを見つめた。
輪郭がぼやっとしていて、最新機で撮ったのに画質が悪いなぁと思った。
ため息を吐こうとした。しゃくりあげたせいで上手く息を吐けなかった。

あふれ出しそうなくらいいっぱいの思い出があるのに、なぜか、もっとみくちゃんと一緒のお仕事がしたいな、と思った。
みくちゃんとトークしたい。みくちゃんとライブをしたい。
明日、プロデューサーさんに直談判してみよう。そう私は決意した。


8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/26(月) 04:24:49.31 :q5Fk7A030

***

シンデレラの舞踏会の日が訪れた。

交渉の結果、事務所の上げて行うこの大型ライブにアスタリスクとしてのステージも設けられることになった。
プロデューサーさん曰く、私の前の日にみくちゃんが同様な相談を持ち掛けていたらしい。
まだ対応を考えていたところに私が来たものだから、その意気や良しとステージを設けることに決めたそうだ。

ステージでの衣装も二人で相談して決めていいとのことだった。
その言葉に甘えて衣装部屋で今まで着た衣装を見させてもらう。

初めてのお仕事で着た衣装。初めてのライブでの衣装。二回目のお仕事で着た衣装、他のイベントで着た衣装……
どれも手に取って確かめてみる。コレが良い、アレの方が良いなどと喧々諤々に言い合いながら。
すると、何かが落ちて、カツンという硬質な音を立てた。
「あれ、何これ」とみくちゃんがすかさず拾い上げて言う。

ミントキャンディだった。

私たちは顔を見合わせた。「初めてのお仕事のときの……」

「懐かしいよね。お互いとがりあって、ケンカばっかりしてたのに」

トニックウォーターのような苦い思い出とともに私は笑った。みくちゃんも笑う。

「それほど前じゃないにゃ。ほら、まだ賞味期限も切れてない。それに、ケンカするほど仲が良いって言うし」

 みくちゃんはそう言ってこっちを見る。

「私たちは最高最強のユニットにゃ!」

私も笑う。そして、拳を軽く合わせた。
やっぱり、私たちは運命的なユニットなのだろう。そんな気持ちがした。
プロデューサーさんが肩をすくめているのが、目の端で見えた。


9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/26(月) 04:28:01.78 :q5Fk7A030

結局、初ライブの時の衣装で出ることになった。
珍しくみくちゃんと意見が合致して、明日は嵐じゃないかな、って思う。
私の首下では王冠のネックレスが、みくちゃんの手首では金色の鈴が揺れていた。
これも露出の多い服なのに、全く寒くなかった。

舞台袖で、この衣装のポケットにも紙切れが入っていたことに気づいた。
もう読み取れないほどに印字が薄くなったレシート。時の流れが感じられる。
だけどその裏には、≪みくに奢る!≫と鉛筆で書かれていた。
確かあの後、その約束を忘れちゃってそのまま流れてしまったんだっけ。

ステージに向けて、私の前にいる硬くなった背中に呼びかける。

「舞踏会終わったら、何か奢るよ」

「何にゃ、藪から棒に……」

「初ライブの日のとき、約束守れなかったからさ」

「……ああ、あのときね!」

今まで忘れてた、とみくちゃんは撥ねるように言った。

「だからさ、このステージ、絶対成功させよう!」

みくちゃんはフフンと笑う。「もちろんでしょ!」
前の背中から、緊張が解れたのが伝わってくる。

カウントダウンが始まる。5。4。3。2。1。
タイミングを合わせ、ステージへ二人そろって飛び出していった。

***

ポケットってタイムカプセルみたいだ。
ライブの熱が冷めやらぬ中、私は王冠のネックレスをポケットにそっと入れた。今日の思い出とともに。


10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/26(月) 04:31:53.37 :q5Fk7A030

以上となります。
お読みいただきありがとうございました。

過去作
【モバマス】李衣菜「午後11時」みく「午前5時」
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【モバマス】みく「バースデーライブ」
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